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右翼系評論家たち

　

いよいよトランプ大統領の敗北が鮮明になってきて、バイデン次期大統領も政権の構築に力を入れだしている状況だが、この期に及んでいまだにトランプは負けてないとか民主党は不正だらけでこれを成敗しなければならないとか主張するグループや個人が大勢いる。それほどアメリカの分断が深刻だという証拠になるのだろうが、日本でも今般の大統領選を通じてどうにも見過ごせない危うい現象が報道で見受けられるようになった。

それはネトウヨを中心としたグループの言論やそれを支える右翼系の識者や評論家たちだ。一般のマスコミや新聞ではそこまでないがネット上ではあまりに酷くて見ていられないほどだ。ＳＮＳやネット上のニュースサイトでは彼らの意見が多くて、それがほとんど現実を無視したフェイクニュースを基盤にした意見ばかりだ。木村太郎、ケント・ギルバート、武田邦彦、平井文夫、櫻井よしこ、古森義久など右系の評論家はまるでバイデンが詐欺師でトランプこそ正当な大統領だとの論調で意見を発している。

木村太郎やケント・ギルバートはトランプ応援団だからトランプびいきの意見が多いもののまだ冷静な部分を持ち合わせているが、平井文夫氏や武田邦彦氏はかなり酷い。木村太郎は前回の選挙でほとんど一人トランプ当選を予想して脚光を浴びて、以来マスコミに引っ張りだこになり特にアメリカ大統領の話題の時には必ずテレビに登場する状態になっている。今回も朝から晩までひっきりなしに登場していたが、前回の大統領選では冷静な視点でトランプ当選を予想し見事に当てたのに対し、今回は完全なトランプ応援団と化しバイデン有利を予想する識者に対しては熱くなって反論していた。どうしたのかなあと不思議な感じだったがやはり今回は予想が外れバツの悪い表情だった。今回、トランプ敗北を受けても次の２０２４年にはトランプが再出馬して勝つだろうと言っているのはいただけないが、それくらい思い入れは強いようだ。

ケント・ギルバートはそもそも右翼系の論者で様々な局面でリベラルの人間を非難していて、特に中国や日本の野党を厳しく非難することが多い。彼は自他ともに認めるトランプ応援団だからもちろんトランプに一票を投じているし、トランプびいきの論陣を張っていたが今回のトランプ敗北は素直に認めているようだ。ただ弁護士らしくトランプが逆転できる方法は可能性低いながらまだ残っているとの主張はしている。この二人はまだ冷静な部分を持っていて反対派と議論もできると思うが、武田氏や平井文夫氏、古森義久氏などはもはやそんな範疇ではなく、反対派に対してはただ熱くなって闇雲に攻撃するだけの識者とは言えないところまで行ってしまっている。

平井文夫は一番ひどいと思うが、フジテレビという放送局に勤めながら極端な右翼論者である自論を公共の電波に乗せて振りまいているだけのとんでもない解説者で、これまでも偏った自論を展開して数々の問題発言をしてきた。よくフジテレビもこんな解説者を使うなと不思議だったが、さすがに今回だけは発言が酷すぎて問題視されたのかぱったりとテレビで見かけなくなった。多分、社内で処分されて退社に追い込まれたのかもしれない。これほど程度が低く客観的に物事を見ることができない解説者は今まで見たことないが、彼のように人間がラッキーな面があったにせよ出世の階段を上ってきたことが不思議でならない。

武田邦彦は別の意味でたちが悪い評論家だ。彼は学問も収めていて高度な知識を持ち合わせているのだが、とにかく発言が的外れで過激だ。正しく過激だったら良いのだが、これが飛んでもなく偏っていてそれを売りにしている。曰く、地球温暖化など全く問題なくどんどん二酸化炭素を出したほうが良いとか、小保方さんのスタップ細胞は存在していて山梨大の〇〇教授が陰謀を働いたとかとにかく世の中の常識と反対を主張してそれでYouTubeなどで儲けている人物。なまじ知識があるのでそれで騙されるネトウヨなどが多くて、ネット上ではかなりの信奉者が居て妄信している。ちょっと考えればすぐ分かるのだが世の中には自分で考えずに他人に考えるのを任している人が多いと見えて、ネット上の支持者はかなりの数に上るのではないだろうか。

櫻井よしこはまさに羊の皮をかぶった狼で、柔らかい物腰で強烈に左派を攻撃してくる。彼女の場合は中国や日本の歴史関連に五月蠅くて自分の持論に反する者に対しては容赦ない。ただトランプ問題にはあまり興味はないらしくトランプを応援はしていたものの今回の選挙戦ではそれほど活躍はしてなかったようだ。古森義久氏はアメリカの事情に詳しく日頃は的を射た評論を発信していてテレビ番組でも良く登場する評論家だが、今回の大統領選ではトランプ応援団になったんじゃないかと思うほどトランプよりの議論に終始していた。それはトランプの悪行や失点には一言も触れずにバイデン側の欠点ばかりついていた。民主党の不正を声高に主張してまるで民主党が悪魔の政党だと言わんばかりだった。昨日は木村太郎と一緒にテレビに出ていたが、彼はまるで木村太郎の子分になったように彼の意見に同調していて、これには彼を評価していた私もかなり失望しつつ評論家もあまりに個人に入れあげると目が曇ってくるものだと再認識した。

問題はこの上に挙げた右系の評論家や識者はネトウヨやネット民にはすこぶる評価が高くて、それはもう一種の新興宗教のごとく多くの羊を連れてネット上を彷徨っている。ネトウヨと言われる者たちは２つの特徴があって、一つは現政権支持、もう一つはマスコミ批判でこの二つは何処に行っても共通している。日本でもアメリカでもヨーロッパでもそれは一緒だ。日本では安倍首相を強烈に支持していて、彼を非難しようものなら一斉に噛みついてくる。それはモリカケ問題や桜を見る会など全く眼中になく、兎に角安倍政権が続くのを良しとする者たちなのでなかなか議論が成立しない。

彼らはどういう訳かマスコミ嫌いなのも共通していて新聞やテレビは大嫌いだ。アメリカでもＡＢＣ、ＣＮＮなどの既存のマスコミは憎悪の対象で新聞などまず読まない。どうにか見るのは右翼系のフォックスニュースくらいか。そういうことで入ってくる情報はほとんどネットニュースのみなので世の中の状況をまず正確に捕まえることはできない。ただネット上で流れるフェイクニュースを正しい情報だと考えるのでとんでもない現状認識しかない。そこでトランプ大統領の数々の汚点も気にならないのだろう。この辺りは安倍支持者の心理とほとんど同じなのかも知れない。

と言うことで、今回のアメリカ大統領選を巡る報道では右翼系の評論家やそれに付き従うネトウヨたちの考えが如実に分かり、どうしてネット上で彼らがとんでもない議論を吹っかけているのか分かるような気がしてある意味勉強になった数週間だった。評論家としてはリベラルよりも右巻きの議論を展開したほうがネット民の支持も受けやすく職業上はメリットがあるという功利的な面も計算しているのではないだろうか。ネット民はそんな事情も知らず群衆に従って叫んでいるだけなのだろう。そういうことを感じたここ数週間の報道だった。