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　　ワクチンに関する疑問

近頃、ネット上のあるサイトから医療関係の回答リクエストが多数メールで来るようになっている。これは今年初めだったろうか、ある紹介メールを見て面白そうな記事があったのでそこを閲覧していたのが始まりだった。そこでいくつかの医学的記事とそれに対する回答をしていたら次第にその数が増えていった。そのリクエストがあまりに多いので興味が湧くものに絞って返事を出+している。そのなかで圧倒的に多いのがワクチンに関してのリクエストだ。どう言う訳か結構学歴の高い人たちからも迷信や都市伝説、陰謀論に乗せられた疑問が来るので当惑することもある。

今回はそのうちのいくつかを紹介したい。まず多いのはワクチン接種で起こる副反応が非常に怖いまたは接種によって死亡する危険性があるんじゃないかという思いだ。副反応自体は確かにほかのワクチンより起きやすく例えばインフルエンザワクチンの接種と比べると多少強い印象がある。ただそれも接種日から数日で、私の場合で言えば２回目の接種の日の夜に痛みで目が覚めたことがあった。ただそれも翌朝目が覚めるとなんともなく、よく言われる発熱や頭痛は経験しなかった。さらに減っては来たがまだワクチン接種で新型コロナウィルスに感染してしまうのではないかという疑問もある。これはもちろん皆無で、ｍＲＮＡワクチンはウィルスそのものを注射するわけではなくてスパイクタンパクの設計図だけを打つわけだから感染はあり得ない。

接種による死亡例だがこれはもう陰謀論と言った方が良いと思うが、治験で接種したボランティアが全員５年以内に死亡していて現在接種している人たちも全員５年以内に死亡する可能性が高いとの発言。なかにはエイズウイルスで有名なモンタニエ博士がそのように断言したという尤もらしいことをアップする人も居た。これもかなりいい加減な記事で実際モンタニエ博士は困り果てて、わざわざその発言を否定するコメントを出したほど。また実験に使ったモルモットが２年以内に全部死んでしまったという発言もあった。これもモルモット自体の寿命が２年なので、人間で言えばワクチン接種した人全員が１００年以内に死亡したと言うことと同じで無意味な発言だ。そもそも健康に関して最も精通していて情報も身につけているはずの医師が最も接種率が高く、その彼らは世界中でほとんど５年以内に死ぬような選択をするはずがないのは自明だと思うのだが。

そこまで都市伝説的な意見とは別にもっと現実的なものとしては、先日発表された１００万人に接種して３５人が死亡したという記事についての意見が多かった。この数字自体は嘘でもなくちゃんとした研究機関が発表したもので正式な記事だが、これについてもだからワクチン接種のせいでこれほどの人が犠牲になったというわけではない。同じ期間にワクチン接種してない同じ人数の人たちを追跡してもほとんど同数の死者が記録されていた。つまり打っても打たなくても１００万人については３０人くらいの死亡者は出るものなのだ。もちろんワクチン接種による死亡者は今の段階で居ないとも言えず世界中で検証している状態だから今後新たな知見が出てくる可能性はある。

またｍＲＮＡワクチンは遺伝子組み換えして長い間遺伝子内に残って身体に害を及ぼすという意見もあった。これも全くの誤解でこのワクチンは遺伝子組み換えとは関係なく、コロナウィルスの最外層にあるスパイクタンパクの設計図（ｍＲＮＡ）を注射して身体の細胞質でスパイクタンパクをつくり、リンパ球がそのスパイクタンパクに応じた抗体を作るものだ。しかもｍＲＮＡは非常に不安定で一週間くらいで消えてなくなる。

こういう書き込みを見ていると、パンデミックを巻き起こした未知のウィルスとその治療法に対する恐怖心から発しているものが多いようだ。それ故、普通ならすぐにも見破ることが出来るような知的レベルの高い人たちが陰謀論や都市伝説に冷静さを失ったせいでまんまと乗せられた感がある。もちろん医学的な知識不足からそういう訳の分らない説に乗せられることもあるが寧ろこれは少数派の印象だ。私としては出来るだけこういう陰謀論や都市伝説を医学的に否定して、集団免疫の確立のためにも出来るだけ多くの人たちに接種して貰いたいと思っているが、一度頭を占拠した陰謀論はかなり強敵で我が身の力不足を痛感する日々が続いている。

それでも度重なる議論を通し正しい医学的治験にも接してワクチンの理解が進んでいるようで、ここでの趨勢もワクチン接種派が増えてきているようだ。我が国のワクチン接種も今では医療関係者と老人から一般の人たちにも広まりつつあるようで、同級生や近所の知り合いの中でも随分接種している人たちが増えてきた。こうしてみるとワクチン拒否派は全体から見ると少数で我々がそれほど心配するほどでもないのかもしれない。このまま接種が広まって今日本を覆っているコロナ渦の空気を変えてほしいものだ。