ウクライナの惨劇
　

数週間前にロシアがウクライナに侵攻して大変な惨状になっている。２１世紀の世界でこんな大国が力ずくで隣国に攻め入るとは全く想像していなかったが、核を持った大国がこういう暴挙を起こすと世界はアメリカを含めてどうにも手出しが出来ないことがハッキリとした。これまではイラクにしろアフガニスタンにしろその強大な軍事力で世界の警察官として介入して徹底的に相手をたたきのめしてきたアメリカだが、相手に核があるとこうまで違うのかという感じだ。

ＮＡＴＯもアメリカ軍も経済制裁や金融制裁でロシアが引き下がるのを待っているだけで、軍事力では何にも手出しできないし今後もそれは多分変わらないだろう。プーチンがそれくらいで退却するはずもなく今後ウクライナは国中が破壊されるような悲惨な状態になる可能性がある。それを分っていても世界中手を出せないのだから、核を持った国の独裁者が一旦武力を使って他国を攻めようと決心したらもうどうしようもなくそれを止める手立てはないと言うことだ。

ロシアはジョージアやチェチェンにも攻め入ったが特にチェチェンは都市を徹底的に破壊し尽くして、都市や住宅地を更地のようになるまで爆弾や砲弾で破壊し尽くした。ただ世界のジャーナリズムは今回ほど報道することはなくその 惨状を知ってない人も多いと思う。これはいみじくも欧米のジャーナリズムが本音を漏らしたように、被害者が白人で「大勢の金髪で青い目のウクライナ人がこんな殺され方をするのは忍びがたい」と言うことかも知れない。唯今後プーチンはチェチェンを同じような状態に持って行く危険性は高いと思う。

今、世界中はこの解決策について効果的な案は持ち合わせていないと思う。ウクライナに飛行禁止空域を設定すればロシア空軍の空爆をかなり減らすことが出来るが、それも ゼレンスキー大統領の必死の願いをＮＡＴＯもアメリカも叶えることはなかった。 飛行禁止空域を設定すると言うことはロシア機を撃墜することに繋がるのでＮＡＴＯも踏み込めないのだろう。やはりプーチンの核攻撃を恐れてと言うか第三次世界大戦に繋がることを恐れている と思われる。今更ながら核の怖さをアメリカもヨーロッパも痛感しているんじゃないだろうか。

この解決策はあるのかというと今のところ外交交渉でどうにか休戦協定を結ぶのが精一杯だろうが、プーチンの要求する休戦の条件はかなり厳しく、ウクライナの武装解除とか中立化などでこれでは独立国に対する提案とはとても言えない。これはウクライナは当然ながら欧米の仲介国もとても飲めるようなものではないと思う。そういう状況では日々大勢のウクライナ人が犠牲になっていくのをただ黙ってみているだけになり、この惨状が果てしなく続く危険性もある。

友人が半分冗談でこの解決策はプーチンを暗殺するくらいしか思い浮かばないと言っていたが、本当にそれくらい打つ手がないのが今の世界の政治家達の気持ちではないだろうか。ただその辺りはプーチンも当然理解していて仲介役の国の大統領との会談でも、最近報道されるニュースでは６〜８メートル離れて会談している。大統領との会談でさえそうだから他の人間が近づけるはずもなく、そう易々と彼を狙撃するチャンスがあるとも思えないし、また当然ながらそういうことは正当な解決策とは言えないだろう。

私の医院でアレルギーの治療を永らく続けている少年の母親はウクライナ人で馴染みの人だが、あまりに気の毒すぎてかける言葉もないくらいだ。おまけにその友人の少年のお母さんがベラルーシ人でかなり心理的には複雑なものがあるだろう。と言うのはこの二家族は住む区は違って家もかなり離れているのに東ヨーロッパのコミュニティの付き合いなのか、この治療はウクライナ人のお母さんから紹介されてベラルーシ人の少年の治療をしているのでかなり親密な付き合いなのだろう。それが遠いウクライナの地で争う当事国になっているのだからその心中たるや如何ばかりだろう。

そういうことでこの戦争の終わりは全く考えが及ばない状態だが、プーチンの野望を挫かせるために世界中が結束して様々な制裁や外交で一刻も早くウクライナ人の血が流されるのを止める方向へ導いて欲しいものだ。だがひょっとするとこの戦争はそういう生やさしいことでは決着しないで軍事力を用いての解決を覚悟しなければならないかも知れない。勿論第三次世界大戦はどんなことがあっても避けなければならないが。