二つの国葬
今月８日にイギリスのエリザベス女王が亡くなられて以来、ニュースでスコットランドのバルモラル城やエジンバラのホリールード宮殿などが頻繁に紹介されている。女王の亡くなられたバルモラル城で１１日まで安置されて１２日にホリールードに
行ってその後セントジャイル大聖堂に一泊、１３日にはロンドンに移されバッキンガム宮殿に安置された後で１９日にウェストミンスター寺院で国葬が行われる予定になっている。これらは３年前にロンドン旅行をした際にバルモラル城以外は全て訪れた場所でニュースを見ていても非常に懐かしい情景だ。
ウェストミンスター寺院は市内のセントポール大聖堂に対して西にあるので西にある寺院という意味でこの名がついた（因みにセントポール大聖堂はイーストミンスター寺院という別名もある）。ウェストミンスター寺院には歴代のイギリス王など王室関係者だけでなくニュートン、ダーウィン、ディケンズ 、ネルソン提督、S,ホーキングなどの著名人が葬られていて、もう既に埋葬する空きスペースがなくなってきているらしいがエリザベス女王の場合はどうするのだろう？ セントポール大聖堂も素晴らしい建築物で今回もエリザベス女王が亡くなった日に市民 が集まって追悼式が行われていた。３年前にここを訪れたときは大聖堂が分らなくて探していたら、身なりの良いビジネスマンらしきイギリス人があちらから話しかけてきて丁寧にも大聖堂が見えるところまで案内してくれて大変恐縮した思い出がある。
３年前はまずロンドンを数日間散策した後、飛行機でスコットランドのエジンバラに行った。エジンバラは１０００年以上前に作られた古い都市でまるでハリーポッターの世界かと見間違うほどの古い石造りの街造りで道は石畳で日本ではお目にかかれない景色だった。メアリースチュアートの住んでいたエジンバラ城を数時間かけて見学した後で 、ロイヤルマイルという1.6キロほどの石畳の 大通りを下って行った。この道の両側はいかにも永い年月が過ぎ去ったような重厚な石造りの建築物が聳えていて、他の都市では味わえないような雰囲気と情景だった。その中の一軒のパブに入ってフィッシュアンドチップスを注文した。一般にイギリスの料理は評判が良くないがこのとき食べたフィッシュアンドチップス は結構美味でビールとの相性も良くて、その後滞在中に何度も同じ料理を注文したのを記憶している。
エジンバラ城からこの素晴らしい情景のロイヤルマイルを下っていくと行き着く先が今盛んにニュースで報道されているホリールード宮殿で、これがまた歴史を感じさせるイギリス王室由来の施設だった。ここは女王の公式 保養地で、１０００年以上前に建てられた建築物だがその後何度も大火で焼失を繰り返して、最後は１６７０年代に現在のものが建てられたらしい。メアリースチュアートやエリザベス一世の過ごした部屋などが保存されていて壮大な歴史を感じさせられた。一面緑の芝生の敷地の中に黒っぽい石造りの 大宮殿がドンと聳え立っていたのが印象的だった。 現在、ニュースの場面で頻繁にホリールード、セントジャイルズ大聖堂、ロイヤルマイル、ウェストミンスター寺院などが紹介されているがこれらは歴代王朝の重みのある歴史的建造物でイギリス王朝の荘厳さを感じさせ られて圧倒される。
これから女王は一旦バッキンガム宮殿に戻ってウェストミンスター寺院での国葬になる予定だが、 女王の棺が通る沿道には雨の中５〜１０時間待ってでも人々が最後の別れを惜しんでいる。これほど国民皆に慕われて国葬を迎える女王と比べると、安倍元首相の国葬は余りにも反対が多すぎるし内容も薄っぺらすぎる。それは形式的な葬儀が貧弱と言うことではなく内容が悪すぎる。親友だと公言していたトランプ元大統領を始め欧米の大統領や首相はほとんど欠席で、G7では唯一カナダのトルドー首相のみの参加に止まる。国民も一時は国葬に賛成していたが、安倍元首相自身が最も旧統一教会に深く関係していてそのために殺害されるきっかけを作ったことなどが判明してくると半数以上は反対に回っている。やはり統一教会関連だけでなく在職中にモリカケ、サクラ問題など身近なところにせこい権力の使い方をすると尊敬もされないし国葬という厳粛な儀式には違和感があるのかも知れない。
余りに対照的なこの二つの国葬に関して世界はどう思うのだろうか。イギリスの国葬は日本の天皇皇后を始め世界中から国家元首が来るそうだから、８日後に行われる日本の国葬の貧弱さが際立ってしまって何だか恥をかくために強行するような感じにならなければ良い が。イギリスでさえ国葬に関しては戦後はチャーチル元首相一人のみということだからそんなに国民の反対を押し切ってまで行う儀式ではないと思うし、ましてや安倍元首相のように在任中の業績に関しても賛否入り乱れた感情を持たれている人物について行うべきではないと思う。そうは言っても今更取りやめも無理だろうから出来るだけ質素に変に国民を分断するようなことのないように営まれることを願うしかないのだろう。