スシローでの悪戯

　

スシローでの客によるイタズラが大きな反響を巻き起こしている。これに類するような行為は以前からもあったがその内容も酷くＳＮＳで拡散されて大問題になった。高校生が湯飲みや醤油の差し口を舐めて元に戻したり、レーンを走っている皿の上の寿司に何度も舐めた指で唾を付けたりやりたい放題だ。その余りにも酷い悪戯に反響も強く、すぐに身元が特定されて実名や高校名までも晒される事態になった。早速、親に付き添われてスシローまで謝罪に訪れたがそれは受け入れられなくて、警察への被害届をすることになった。ユーチューブでは顔もぼかしが外されていて、まだあどけない金髪の高校生だった。

折しもスシローの前後で同じような回転寿司屋とかカラオケ店での悪戯が発生していて、これらも相まって今回の大騒動になっているようだ。余りの反響に親会社の株価は一日で時価総額１７０億円ほど下落するほどだった。スシローが謝罪だけで済まさず、刑事民事両方で責任を追及するというのは当然のことだろう。これを中途半端に許していると今後の模倣犯の発生を考えても良くないだろう。ただこの両親へはマスコミの取材が殺到していて両親それぞれが対応しているが、初めは父親が反社の人間で父親が撮影した動画を流した、あんな父親だから子供はあんな悪戯をしたなどとフェイクニュースも流れていた。ただ実際は父親もマスコミに対して真面目な対応で子供の行為に真摯に反省していて、母親もそれ以上に子供の行為に悲壮感を持って泣き出さんばかりに悔いていた。直後に流れたフェイクニュースとはまるで違った真摯な対応だった。

それで思い出すのが私自身の悪戯で起こった反響の大きさだった。あれは小学校低学年の時だったが私が鉄道の線路に石や釘を置いていたのが見つかってかなりの騒動になったときのことだ。近所の遊び仲間と いっしょになって手裏剣を作るために五寸釘を線路に並べて遊んでいた。なかには石を置いて遊んでいた友達も居たようだ。それがどういうわけか または当然と言うか見つかって、その日の夕方に鉄道公安官が数名で私の家を尋ねてきた。そこで説明を受けた事の重大さに母親は泣きながら「学校へは言わないでください」と哀願していた。公安官は「大丈夫です、学校へは伝えませんから 、僕ちゃん正直に言うんだよ」と言っていたが、翌日は朝一番に担任から校長室へ行くように指示がありそこでしこたま絞られた。新聞にもその記事は載っていてしばらく両親は針の筵だったろうと思う。その当時は父親の放蕩のせいで経済的にも困窮していたはずで母親の心情を考えるとどんなにか心細く、我が子の行為については自責の念も湧いてきて悲しかったろうと今でも母親へは 申し訳なかったと思う。

これは後年笑い話になったのでまだ救われたが、これが実際に事故でも起きていたなら一生償いきれない悪戯になっていたろう。件の母親もこの時の私の母のように心細い心情と責任感で居たたまれない状態だろうと思う。この母親は赤ちゃんを連れての記者対応でいっそう哀れさを感じたが、この張本人の高校生も反響こそ大きかったものの人生一発アウトという程の事件ではないので、この母親の心情をくみ取って自力で再起の道を歩んで欲しいと思う。

ただ 今回の騒動を見ていて心配なのはこれだけのニュースになりながら未だに模倣犯がぞくぞくと発生していることだ。今日は同じスシローで若い女性がまた醤油の差し口にいたずれをしている動画がＳＮＳにアップされていた。また食卓上に置かれている爪楊枝を使って使用後の楊枝を元のケースに戻すなどという悪質な悪戯もアップされていた。 同じような悪戯は牛丼の吉野家や私もよく利用する資さんうどんでも続いた。これはもう今回の騒動が解決したらそれで終わりということではなく、回転寿司は人の傍を回転して寿司を運ぶのを止める、醤油の差しや爪楊枝は食卓上に置かないで一人分ずつ包装しておくなどの根本的な 改善策を導入しないと解決しない大きな問題になるのかも知れない。

以前から同じような悪ふざけは多少はあったのかも知れないが、今のようにＳＮＳに大々的にアップされるような時代には前とは違った飲食店などの配慮が必要になってくるのかも知れない。何しろあのビジュアルを目にすると流石にしばらく大衆食堂に行くのは控えようという気分にまでなる。もちろん株価もすぐに元に戻るだろうしこういう気分も早晩忘れてなくなっていくのだろうが、後で振り返ると日本の性善説に立った飲食店のシステムを根本的に変えていく転機になったと記憶されるような事件なのかも知れない。