知事と副知事



今や自民党と立件民主党のリーダー選びを超えて日本中の注目を浴びている話題がある。それはこのコラムで7月に紹介した兵庫県知事の問題だ。その時には知事が辞任してすぐに収束すると思っていたが、知事の特異なキャラクターと 度重なる新しい事実の発見で未だに世間の注目を集めている。７月からの２か月でかなり進展して全容が次第に姿を現してきた。それは斎藤知事一人で全てをやらかして事件だと思われていたが、そうではなくて牛タン俱楽部という県行政のトップ４人が知事と兵庫県行政を好き勝手に取り仕切っていた実態が明らかになってきた。なかでも片山安孝副知事はその最たるもので、斎藤知事が単身乗り込んできた兵庫県の県政を勝手知ったる片山副知事が実行部隊長としてかなり独善的に振舞っていたらしい。

現在、百条委員会が２度開催されそれは全国に報道されて、今まで県庁の奥にあったさまざまな問題点が我々にも見えるようになってきた。これまでは強権的な知事の指示で大人しい副知事ら部下が従順に従って県政を取り仕切ってきたと思われていたが、どうもそうではないことも次第に明らかになりつつある。百条委員会が開催される前に早々と辞任した片山副知事だが、その後に分かった彼の行ってきた悪行を目にすると彼としては辞任会見で涙を流して同情を受けて、非難される前に裏舞台に引っ込んでおこ うという算段が見え見えだ。それがバレた後はマスコミの取材にも一切応答することはなくなりひたすら逃げの一手だ。

そもそも今回の事件で亡くなった県民局長をゲシュタポのように厳しい言葉で追及して、最終的に停職３か月という処分まで下し自殺まで追い込む契機を作ったのもこの片山元副知事だった。しかも彼の場合は知事の腰ぎんちゃくのような振る舞いを県民局長から告発されていたのを県民局長のパソコンで目にして、知事を諫めるどころか自分の関与した問題まで握りつぶそうとして県民局長を追い詰めた可能性が高い。記者会見での彼の涙を流しての弁明は何だったんだろうと思うが、こういう鋼のメンタルを持った者が生き残って 、正義感を持った優しい人間は消えていく世界なのだろうか。

また 阪神タイガース優勝パレードでの予算不足をキックバックで補おうとしたことも事実だったようだ。つまり県から金融機関に補助金を一億円から４億円に増額することで金融機関からの寄付金を増額させ 、それを優勝パレードの財源にするという圧力を片山副知事が直接働きかけてことも判明してきた。 結果的には副知事の働きかけ直後にある信用金庫では５０万円だった寄付金が２０００万円まで急騰している。そういう経過を見ていると真っ黒に近いグレーだらけの状況だが、そうだからこそ県民局長はそれを告発という形で公にしようとして、知事や牛タン倶楽部の４人の黒い力に負けて亡くなったと思われる。

この問題は２人も自殺者を出しているので知事の辞任などでこのまま終わるような問題でなく、さらに背任罪など法的な事件に発展する可能性もあると思う。ただ知事自体がメンタルが強いというか維新の会まで反知事側に回った四面楚歌の現状でもまだ辞任は考えてないようだ。そういう経過で１９日には 議会が開かれ多分知事の不信任決議が全会一致で通る可能性が高い。 その後は知事が辞職するか辞職しないで議会を解散して出直し選挙をするかの２通りの道があるが、ただその 新しい議会でも再び不信任決議が出て知事が辞めざるを得ない結論になる可能性が高い。これまでこういう状況で知事が議会を解散させたことはないと言うが、この知事の場合はこれまでの発言を見ていると議会解散を選ぶ可能性は高いと思われる。

そうなると選挙に３０億以上の税金を使うことになり更に県政に負担を強いることになるがこの知事はそんなことは全く意に介さないだろう。とにかく知事は自分が正しくて県民局長は単に知事と幹部への誹謗中傷の文書をばらまいた公務員失格の人物だとの認識しかない。これからは 明日１９日には議会が開かれるが、前述のように知事自らの辞任はまずないだろうから不信任決議が採択されその後の議会解散→選挙という道筋に向かって進んでいくのだろう。兵庫県民にとっては全く迷惑な知事の悪あがきだが、これも 斎藤知事を自分たちが選挙で選んだ結果だし、知事には法的にそういう選択肢を与えられているのだから甘んじて受け入れざるを得ないだろう。