お受験

幼稚園のお受験に絡んだ幼児の殺人事件が起こったようだ。今では日本中で幼稚園のお受験が行われているようだが、東京でのお受験は特異なものらしい。まず１才になったらお受験用の施設に通いだして、２才でお受験。そのために母親の注ぎこむ熱意と経済的な投資は凄まじいものだと言う。母親らの服装や装飾品にもどのようなものが合格しやすいと言う情報があり、試験での面接の態度も理想のケースが示されそれに従って均一な母子が出来上がっていくと言う。

今回殺人を犯した母親達を目にするとなにやら哀れで同情するが、これは単にお受験の悲劇と言うよりもっと根深い日本の病理が露呈されているように思う。父親は会社のことで手一杯でこのような事情に耳を貸さない。母親はお受験を絡めた異常な近所付き合いの中で、次第に視野狭窄に追い込まれて、異常な心理状態になっていく。挙句の果てに殺人まで犯すようになる。

ちょっと視点を変えてアメリカやヨーロッパでこのような異常なお受験があるかどうか、まず考えられないだろう。何がそんなに違いを生むのかと言うと、やはり個人の自我の確立がなされているかどうかという点に考えが及ぶ。あのお受験に奔走している日本の母親は自分のアイデンティティーは何処へやら、子供をどんな有名幼稚園に合格させるかということで、己の立場を確かめているように思う。

私などは子供の小学校や中学校受験の年にもゴルフに行きっぱなしだったから、ずいぶんと妻から非難されたものだ。いわく誰々ちゃんのところは塾の時は車で送り迎えをしている、いわく受験勉強の時は家でテレビを消して静かにしていた・・・ 。
ふざけるな！　と言いたい。受験は本人が自分の意思で自分のためにするもので、周りがなぜにそんなに気を使わなければならないのか、私には多いに不満だった。

と言ってもこれが日本の平均的な家庭らしく、これに逆らうのは妻とのかなりの軋轢を覚悟しなくてはならない。日本のお父さん、お母さん、
子供達とは独立したもっと自分達の時間を大切にしませんか？
子供と一緒でないと自分のアイデンティティーを見つけられないなんておかしいと思う。どうせ子供は独立していく存在なのにあまりにへばり付いていると、可笑しなことになるのじゃないだろうか。と言っても最近では一卵性母娘とかいって結婚してもいっしょに行動するケースもあると言うから、こんなことを言っても通じないかもしれない。

本人達は正常だと思って疑問を感じないでいるんだろうが、外の世界、特に外国から見ると、このお受験に代表されるような状況は、まったく異常なことだと思う。日本のように東京に極端に一極集中する国は珍しいが、あまりにそれが進んで個人の自我が確立されないまま価値観が均一化していくと、このような異常事態がいろいろな面で起こってくるのではないだろうか。今回の事件はお受験殺人という形で現れたが、このままだとまた別の異常な事件が次々に起こる可能性があると思う。